戦略的株式調査レポート
高市政権下の「国策」と2026年米国政治リスクの総括 — 「危機管理投資」と「分断される世界」における日本株の新たなテンバガー戦略
2026年2月10日
パラダイムシフトの完了
2026年2月現在、日本株式市場は根本的かつ構造的な「レジームチェンジ」を迎えています。最大のドライバーは、2月8日の衆議院選挙における高市早苗首相率いる自民党・維新連立政権の歴史的圧勝です。
352
獲得議席数
衆議院の3分の2を超えるスーパーマジョリティを獲得し、戦後政治史における特異点となりました。
21.3兆円
経済対策規模
「真水」を含む大規模な経済対策により、国家機能の強化に直結する投資が実現します。
一方、米国は2026年11月の中間選挙を控え、かつてない政治的流動性の渦中にあります。日米通商関係に深刻な亀裂をもたらすリスクを孕んでおり、特に7月のUSMCA見直しは日本の自動車・鉄鋼産業にとって「生存をかけた交渉」となる可能性が高いです。
高市マンデートと「サナエノミクス」の全貌
政治的安定性のプレミアム
スーパーマジョリティの獲得により、憲法改正や防衛費増額、サイバーセキュリティ法整備といった岩盤規制の打破が「既定路線」として織り込まれます。これは関連セクターのバリュエーション(PER)を構造的に切り上げる要因となります。
「サナエノミクス」の三本の矢
高市政権の経済政策は、アベノミクスの継承・発展を謳いつつも、より具体的かつ目的志向型に変貌しています。21.3兆円規模の経済対策は、単なる需要喚起ではなく、国家機能の強化に直結しています。
サナエノミクスの戦略的柱
危機管理投資
防衛費のGDP比2%超への加速、能動的サイバー防御(ACD)の導入、国土強靱化によるインフラ再構築。防衛プライム企業、サイバーセキュリティインフラ、大手ゼネコンへの直接的な受注増と利益率改善が見込まれます。
戦略的成長投資
経済安全保障推進法に基づく「17の特定重要技術分野」への長期・大規模資金供給(SMR、AI、量子、宇宙等)。研究開発費の公的負担軽減と、初期需要の政府保証によるディープテック企業の事業リスク低減を実現します。
責任ある積極財政
建設国債の発行を躊躇わず、デフレギャップを埋めるための機動的な財政出動。マクロ経済へのリフレ圧力により、名目GDP成長による企業収益の嵩上げと、PBR改善圧力の継続が期待されます。
「17の特定重要技術分野」
テンバガーの新たな漁場
高市政権の経済安全保障推進法に基づき、明確に「17の特定重要技術分野」として定義されたことは決定的な変化です。これらは政府が「カネを出し、市場を作る」ことを約束した分野であり、投資家にとって最も確度の高い成長領域となります。
重点投資分野
  • 先端半導体・レガシー半導体
  • 宇宙・海洋
  • 次世代エネルギー(SMR、核融合)
  • サイバーセキュリティ
具体的な施策
熊本・北海道に続く第3、第4の半導体拠点整備、宇宙戦略基金(1兆円規模)による衛星コンステレーション構築、小型モジュール炉(SMR)の早期社会実装、重要インフラ防御のための能動的監視システムの導入が国家レベルで推進されます。
2026年米国中間選挙と通商の断層
日本が政治的安定を謳歌する一方で、米国は2026年11月の中間選挙に向けて政治的な分断が極限まで高まると予測されます。これは日本企業にとって、為替変動以上の「制度的リスク」となります。
シナリオA:民主党の下院奪還(高確率)
政治的グリッドロックにより、トランプ政権の立法アジェンダは頓挫します。立法が封じられた大統領は、通商拡大法232条やIEEPAを用いた追加関税を発動する可能性が高まります。これは日本にとって最悪のシナリオであり、予測不可能なタリフリスクが常態化します。
シナリオB:共和党の議会維持(低確率)
トリプルレッドにより、大規模な財政出動と減税が継続され、米国のインフレが再燃します。FRBは「Higher for Longer」を余儀なくされ、世界的な流動性が縮小し、新興国経済への打撃を通じて日本の輸出企業に波及します。
USMCA共同見直し:2026年7月の「審判の日」
2026年7月1日に予定されているUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の共同見直しは、日本の自動車・鉄鋼産業にとって極めて重大な転換点となります。
特に鉄鋼における「溶解・注入(Melted and Poured)」要件の厳格化は、日本製鉄などが日本国内で製造した高級鋼板をメキシコで加工して米国へ輸出するビジネスモデルを直撃します。トヨタ、ホンダ、日産などの自動車メーカーは、サプライチェーンの抜本的な再構築を迫られ、巨額の設備投資負担がキャッシュフローを圧迫する可能性があります。
2025年8月選定銘柄の再評価
8月のレポートで選定した「テンバガー候補」を、高市政権の誕生と米国リスクという新たなフィルターを通して再評価します。
TOWA (6315)
確信度:増強 — 生成AI用チップやHBMのモールディング工程における独占的技術。「半導体・デジタル産業戦略」において、後工程の国内拠点化は最重要課題であり、補助金や官民連携プロジェクトの恩恵を直接受けます。ポートフォリオの中核として維持を推奨します。
Appier Group (4180)
確信度:継続 — AIマーケティングのグローバルリーダー。2026年は米国の中間選挙イヤーであり、政治広告やインフレ下での企業の販促活動が活発化します。グローバルな「選挙・インフレ対策」銘柄として保有継続を推奨します。
ユーザーローカル (3984)
格上げ:戦略的推奨 — ビッグデータ解析、AIチャットボット。高市首相が掲げる「国家情報局」の設置やインテリジェンス機能の強化には、公開情報(OSINT)の収集・分析能力が不可欠です。単なるDX銘柄から「ナショナル・インテリジェンス銘柄」へと再評価される可能性があります。
日本製鉄 (5401)
リスク増大:要注意 — 2026年7月のUSMCA見直しにおける「溶解・注入」要件の厳格化は、同社の北米ビジネスモデルに対する直接的な脅威です。潜在価値は高いですが、2026年は政治リスクが高すぎるため、ポジションを縮小あるいはヘッジを推奨します。
新たな「サナエ・セレクション」
真の国策銘柄の発掘
高市政権の誕生により「必須」となった3つのセクター(防衛、サイバー、宇宙)から、新たなテンバガー候補を選定します。
三菱重工業 (7011)
日本のロッキード・マーティンへ。次期戦闘機(GCAP)、長射程ミサイル、イージス・システム搭載艦の主契約企業であり、43兆円予算の最大の受け皿です。次世代革新炉(SMR/高温ガス炉)において世界屈指の技術を有し、H3ロケットの成功により安全保障用衛星打ち上げの独占的地位を確立しています。
日本電気 (NEC) (6701)
能動的サイバー防御の守護神。高市政権下では「能動的サイバー防御(Active Cyber Defense)」が法制化されます。NECは防衛省や警察庁の基幹システムを長年担っており、通信の秘密に関わる高度な監視・解析技術を有します。サイバー空間の「公共事業」化における最大の受益者です。
QPS研究所 (5595)
リアルタイム監視の眼。小型SAR衛星のコンステレーションを構築し、悪天候や夜間でも地表を観測できるデータを提供します。長射程ミサイルを運用するためには、移動する標的をリアルタイムで把握する「目」が必要であり、防衛省にとって戦略的価値が高いです。
2026年の投資戦略
バーベル戦略 2.0 — 「成長」と「生存」の両立
2026年の日本株市場において「テンバガー」を目指す投資家は、平時の成長ロジックを捨て、「戦時(あるいは準戦時)」の思考を持つ必要があります。高市政権の誕生は、日本経済を「効率性追求」から「強靱性(レジリエンス)確保」へと転換させる合図です。
60%
攻撃的成長
国策テクノロジー株:「17の特定重要技術」と「危機管理」。政府予算がトップラインを保証する分野。
40%
守備的バリュー
インフレ・リフレ耐性株:「責任ある積極財政」によるインフレと金利正常化、PBR改革。
2026年は、企業個別の努力以上に、「どの国旗の下でビジネスをしているか」が問われる年となります。米国の保護主義的圧力が高まる中、日本政府が全力を挙げて守り、育てようとする「国策企業」にこそ、次の10倍株の種が眠っています。
高市トレードの本質は、単なる財政出動ではなく、日本という国家の「再武装(Re-arming)」—軍事的にも、産業的にも、技術的にも—への投資であると認識すべきです。

免責事項: 本レポートは情報提供のみを目的としており、特定の有価証券の売買を推奨するものではありません。投資判断は、マクロ環境の急激な変化や政治的リスクを十分に考慮した上で、自己責任で行ってください。