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ハワイ不動産投資レポート 2025-2026
2025年から2026年にかけてのハワイ不動産市場は、著しい「二極化」を特徴としています。一戸建てセクターが底堅さを示す一方で、コンドミニアム市場は明確に買い手優位へとシフトしました。この複雑性は、十分な資本を持ち、的確な判断力を持つ投資家にとって、特定の分野におけるまたとない機会をもたらします。
市場の二極化と経済見通し
景気後退リスク
ハワイ大学経済調査機構(UHERO)は、2025年後半から2026年にかけて緩やかな景気後退に陥る可能性が高いと予測しています。この景気後退の主な要因は、ハワイ内部の問題ではなく、外部からもたらされる連邦政府の政策転換です。
雇用と所得
2026年には雇用が約1%縮小し、実質個人所得の伸びは2028年まで1%未満にとどまると見られています。これは投資家にとって、賃貸収入や不動産価格に影響を与える可能性がある重要な指標です。
インフレ
関税は物価を押し上げ、ホノルルの消費者物価指数(CPI)は2025年と2026年に4%を超えると予測されています。これは不動産運営コストの上昇につながり、特に古い物件では収益性に影響を与える可能性があります。
具体的には、高い関税の賦課、連邦政府職員のレイオフ、そして財政・移民政策の変動が経済に影響を与えると予想されます。この環境変化は、不動産投資戦略の再考を促すものであり、特に日本からの投資家は、円高傾向と相まって、新たな投資機会を模索すべき時期に来ています。
観光業の構造変化
ハワイ経済の根幹をなす観光業は、新たな局面を迎えています。2025年半ばのデータを見ると、総訪問者数は前年比で微減し、パンデミック前の水準には依然として及んでいません。
特に大きな弱点となっているのが米国本土市場で、2025年には国内からの訪問者数が減少すると予測されています。また、重要な日本市場の回復も遅々として進んでいません。
消費のパラドックス
注目すべきは「消費のパラドックス」です。訪問者数が減少しているにもかかわらず、旅行者による総消費額は名目上増加しています。これは、ハワイの観光モデルが、より少ない訪問者数で、より高い消費額を目指す形へと構造的に変化していることを示唆しています。
この変化は、高級コンドミニアムや一戸建て住宅の需要に直接影響を与え、特定の地域では投資機会を生み出す可能性があります。日本の投資家は、この構造変化を踏まえた戦略的投資判断が求められます。
資本環境:金利と円相場
6.5-7%
住宅ローン金利
30年固定住宅ローン金利は、2025年を通じて6.5%から7%の範囲で推移しています。これは歴史的に見れば高水準であり、融資を受ける投資家にとってはキャッシュフローへの圧力となります。
140円
円/ドルレート
2025年初頭に1ドル140円台まで円高が進行し、日本の投資家の購買力が高まりました。これは2021-2023年の円安トレンドからの重要な転換点です。
この二つの金融要因が交差する点に、日本の投資家にとっての戦略的な「好機」が生まれる可能性があります。為替による購買力の向上と、市場環境による交渉力の増大という二つの好条件が重なることは稀であり、この好機は長く続かない可能性があります。
特に、現金力のある日本の投資家は、高金利環境下で苦戦する米国のバイヤーに対して競争優位性を持ち、特定の市場セグメントで良質な物件を有利な条件で取得できる可能性が高まっています。この機会を逃さないための迅速な判断と実行が求められます。
住宅市場の二極化
一戸建て市場
2025年第2四半期の価格中央値は$1,015,000(前年同期比+2%)と底堅さを示しています。在庫は限定的で、高品質の物件は依然として競争が激しい状況です。
コンドミニアム市場
2025年第2四半期の価格中央値は$540,000(前年同期比-7%)と大幅な軟化を経験しています。在庫は急増し、明確な買い手市場へと移行しています。
このような二極化は、投資家に明確な戦略的選択を提示しています。一戸建て市場では価格の安定性と長期的な資産価値の保全が期待できる一方、コンドミニアム市場では短期的な値下がりリスクがあるものの、価格交渉の余地が大きく、長期的なバリュー投資の機会が生まれています。日本の投資家は、この二極化を理解し、投資目的に応じた物件選定を行うことが重要です。
マウイ島 - 流動的な市場
マウイ島の不動産市場は、2023年の山火事からの復興という課題と、短期レンタル(STR)に関する極めて不透明な規制という二重の圧力に晒されています。
2025年6月の市場データ(前年同月比)
一戸建て: 価格中央値は-5.7%の$1,315,000に下落
コンドミニアム: 価格中央値は-28.6%と暴落し、$700,000に
市場混乱の主因
「ミナトヤ・リスト」として知られるアパートメントゾーンでのSTRを段階的に廃止するという郡の提案が最大の要因です。この規制の不確実性が買い手の需要を凍結させ、懸念を抱いたオーナーによる売り物件が急増しました。
投資判断においては、STR規制の最終的な形がどうなるかを注視し、長期的な居住用物件としての収益性を基準に評価することが重要です。短期的には価格の下落が続く可能性がありますが、長期的にはマウイ島の不動産価値の回復が期待できます。
投資リスク警告
: マウイ島のコンドミニアム市場は、短期的には更なる価格下落のリスクが高く、投資判断には特に慎重さが求められます。
商業用不動産市場分析
オフィス市場
持続的な弱さを見せており、2025年第2四半期には-48,835平方フィットのマイナスの純吸収を記録。空室率は11.4%に上昇しています。在宅勤務の定着とテナント企業の縮小により、回復の見通しは厳しい状況です。
リテール市場
軟化の兆しを見せており、2025年第2四半期には-53,000平方フィットのマイナスの純吸収を記録。利用可能率も5.0%に上昇しました。オンラインショッピングの拡大と観光客の消費パターン変化が影響しています。
集合住宅
深刻かつ慢性的な住宅不足に悩まされています。オアフ島の専門的に管理されたアパートメントの稼働率は、一貫して95%を超えています。規制環境が厳しく新規供給が限られる中、長期的な需要と収益性が期待できる分野です。
産業用
慢性的な供給不足と旺盛な需要を特徴とする、完全な貸し手市場です。島嶼州であるハワイは、産業用・物流スペースが経済に不可欠なインフラであり、長期的な安定収益が期待できます。
日本の機関投資家にとっては、特に集合住宅と産業用不動産が長期的な安定収益を求める投資戦略に適しています。オフィスとリテールは、明確な再開発や用途転換計画がない限り、現段階での新規投資は慎重に検討すべき分野です。
セクター別投資提言
一戸建て住宅
ホールド/選択的購入。これは長期保有資産です。買い手は、景気後退の影響が顕在化し、市場がさらに軟化するのを待つのが賢明です。特に現在は、高級住宅市場($1.5M以上)で交渉の余地が生まれつつあります。
コンドミニアム
機会追求的な購入。最も大幅な価格割引が見込まれる分野です。オアフ島とマウイ島に焦点を当てます。建物ごとの厳格なデューデリジェンスは譲れない条件です。特に、管理組合の財務状況と将来的な修繕計画を詳細に検討することが重要です。
産業用/集合住宅
強力な購入推奨。現在の環境において最もディフェンシブな資産です。長期的でインフレに連動したキャッシュフローが見込める資産の取得を目指すべきです。特に日本の機関投資家にとって、安定した長期リターンが期待できる投資先として最適です。
オフィス/リテール
回避/テナント中心戦略。明確な付加価値向上計画や再開発計画がない限り、これらの資産の取得は一般的に避けるべきです。既存物件のオーナーは、テナントリテンション戦略に注力し、長期契約の確保を優先すべきです。
日本の投資家にとっては、円高傾向へのシフトと特定市場セグメントにおける交渉力の増大が同時に起こる現在の局面は、戦略的な好機となり得ます。特に、コンドミニアム市場での割安な物件取得や、安定した長期収益が期待できる産業用・集合住宅への投資が推奨されます。
2025-2026年のハワイ不動産市場は、セクターによって大きく異なる特性を示しています。投資家は、自身の投資目的と時間軸を明確にし、それに合わせたセクター選択と物件選定を行うことが成功への鍵となります。特に日本の投資家は、為替の優位性を活かした積極的な交渉と、徹底したデューデリジェンスを組み合わせることで、この複雑な市場環境から最大の利益を得ることができるでしょう。